自動検査システムの現場で実施するライティングの調整は、ワークが変わるたびに最適な見え方の検討を試行錯誤で繰り返すことが多く、労力と時間を費やす作業になります。
そこで「照明Simulator CAD」を応用し、シミュレーションで事前に"あたり"をつけることができれば、比較的安価な投資(「照明Simulator CAD」1ライセンス 498,000円~)で、これら作業の大幅な効率化が図れるのではと考え「ワークの見え方シミュレーション」を検討しました。



まず、既存の検査用照明とカメラを用意してワークを撮影します。
照明は日進電子工業株式会社製マルチライト型LED照明MDシリーズの「WMD-80」を使用しました。
「WMD-80」はハイポジションからローポジションまでフレキシブルに対応するマルチアングル照明で、ワークディスタンスを変更した照射が可能です。
また、約180度に及ぶ超広角照射なため、様々なワークで広く利用できる拡張性も選定理由です。
「WMD-80」に汎用の産業用USBカメラを組み合わせ、ナットのキズ検査でワークディスタンスによる比較を行います。

WD別撮影画像




つぎに、照明とワークを解析用にモデリングします。
照明は日進電子工業株式会社様より技術協力をいただき、性能評価のため実機を測定したデータを活用しました。
測定と同じ条件で照度解析を行い、パラメータを調整しながら測定データとの近似値を探索します。
実測データ

照明モデル
シミュレーション結果
照明モデルは「照明Simulator CAD」の入射光保存機能を使ってRayファイルに書出すことができます。
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Rayファイルはテキストデータですので、照明モデルのブラックボックス化が可能になり、モデルの仕様などの秘匿性を保つことができます。
ナットのワークモデル
ナットのワークモデルは3D CADで作成します。
平坦部表面には髪の毛程度(太さ0.05mm)の擦りキズを数本与えました。
3D CADモデルはIGESやSTLなど「照明Simulator CAD」の読込形式で保存します。
3D CADモデル

擦りキズ

ワークモデルを「照明Simulator CAD」でインポートします。
IGESやSTEPデータはサーフェスに分かれるので「キズ」と「ボディ」にグループ分けをし、材質設定をします。
ワークモデルをインポート


グループ分けとキズの箇所の材質指定


解析モデリングの最後に評価面をワークの近傍に配置します。
評価面はスクリーンの役割をし、ワークで反射した光線は「二次(反射)光源」となります。
評価面に近い位置では反射量が多く、離れた位置にあると反射量は少ない、この強度差を利用した「二次光源」を輝度で解析します。


輝度シミュレーションは下記のように評価面の後ろ側に「輝度測定絞り」を配置し、
光線が評価面に到達後にこの「輝度測定絞り」を通過する光線本数によりエネルギーをカウントします。



シミューション結果輝度分布
WDL20mmでのシミュレーション結果輝度分布です。
左側がデフォルトの画面で、結果最大輝度値をピークに明るさのインジケータが設定されます。
右側は「グレースケール」で表示させ、さらにインジケータの最大輝度値を変更して全体の明るさを調整しました。


こちらは照明先端からナットまでの距離00mm、20mm、40mmでの輝度分布です。
「グレースケール」で表示後、ビットマップに出力しました。

WD別シミューション輝度分布



撮影画像と比較しますと、WD 0mmのワーク全体の明暗部は輝度分布でも再現されております。
また、平坦な面でのキズの見え具合を確認すると、撮影画像で一番良好なWD 20mmがシミュレーションでも同様の結果となっております。
撮影画像



今回の照明「WMD-80」はLED光源や光学部品、測定データなどの情報から詳細なモデリングを行うことができました。
また、ワークについても現物が入手しやすく、3D CADデータ化が容易なモデルを題材としたこともあり、撮影画像と輝度分布での相関が取れ、シミュレーションでの予測は可能という結果となりました。
今後も様々な照明器具やワーク、照明方法での検討を重ね、マシンビジョン分野の現場で実践いただけるよう照明モデルの充実を図りたいと考えます。